はじめに
RPA(Robotic Process Automation)を導入すれば、どんな業務でも自動化できる――そう思っていませんか?
実は、RPAには「向いている業務」と「向いていない業務」がはっきりと存在します。ここを見誤ると、せっかく開発したロボットがまともに動かない、メンテナンスコストばかりかかるといった事態に陥ります。
私はRPA開発の現場で7年間、数多くの業務自動化プロジェクトに携わってきました。その経験から、RPA導入で失敗しないための「業務の見極め方」を具体的にお伝えします。
RPA開発に向いている業務の4つの条件
RPAで自動化すべき業務には、共通する特徴があります。以下の4つの条件を満たしている業務であれば、RPA導入の成功確率は格段に上がります。
① 繰り返し作業であること
RPAが最も威力を発揮するのは、毎日・毎週・毎月のように決まったタイミングで繰り返し発生する作業です。
例えば、毎朝メールで届くCSVデータを基幹システムに入力する作業や、月末に各部署から届く報告書を集計してExcelにまとめる作業などが該当します。逆に、年に1回しか発生しないような作業は、開発コストに見合わないケースがほとんどです。
② 複数のアプリケーションを跨いだ作業であること
「Excelのデータをコピーして、Webの業務システムに貼り付けて、結果をメールで送信する」といった、複数のアプリケーションを行き来する作業はRPAの得意分野です。
単一のアプリケーション内で完結する作業であれば、そのアプリケーション自体のマクロ機能やAPI連携で解決できることも多いです。RPAの真価は、異なるシステム間の橋渡しにあります。
③ 一定のボリュームがある業務であること
RPAの開発・テスト・保守にはそれなりのコストがかかります。目安として、1日あたり2時間以上の作業量がある業務でないと、投資対効果が見合わないケースが多いです。
1日30分程度の作業を自動化しても、開発費用を回収するまでに長い期間がかかってしまいます。まずは「時間を大きく食っている業務」から優先的にRPA化を検討しましょう。
④ 人の判断が入らないこと
これが最も重要な条件です。RPAは事前に定義されたルールに従って動くため、「この場合はAの処理、あの場合はBの処理」といった明確な分岐ルールが定義できる業務に向いています。
「なんとなく」「経験的に」「状況を見て判断する」ような業務は、RPAでは対応できません。人間の判断が必要な工程が含まれる場合は、その部分だけ人間が担当し、前後の作業をRPAで自動化するという設計が現実的です。
RPA開発に向いていない業務の3つの特徴
次に、RPA化を避けるべき業務の特徴を見ていきましょう。以下に該当する業務は、無理にRPA化すると逆にコストが膨らむ可能性があります。
① 例外パターンが頻繁に発生する
「基本的にはこのルールだけど、たまに違うパターンがある」という業務は危険です。RPAは例外処理の追加のたびに改修が必要になり、メンテナンスコストが雪だるま式に膨らみます。
現場でよくあるのが、「8割は同じパターンだから大丈夫」と判断して開発を始めたものの、残り2割の例外パターンへの対応に開発工数の大半を取られるケースです。例外パターンは事前に洗い出し、その数と頻度を正確に把握した上で判断しましょう。
② 人の判断が必要な工程が含まれる
「向いている業務」の裏返しですが、改めて強調します。承認・却下の判断、内容の妥当性チェック、イレギュラー対応の判断など、人間の知識や経験に基づく判断が必要な業務はRPA単体では自動化できません。
最近ではAI-OCRやChatGPTなどのAIと組み合わせることで、一部の判断業務を自動化する動きもありますが、精度やコストの面でまだ課題が多いのが現状です。
③ Webサイトの更新が頻繁に入る業務
見落とされがちですが、非常に重要なポイントです。RPAでWebサイトを操作する場合、画面のHTML構造(ボタンの位置、入力欄のID、ページの遷移など)に依存して動作します。
そのため、操作対象のWebサイトが頻繁にリニューアルやUI変更を行う場合、そのたびにRPAのシナリオを修正する必要があります。自社システムであれば更新タイミングをコントロールできますが、外部のWebサービスを操作する場合は予告なく変更が入ることもあるため、特に注意が必要です。
まとめ:RPA導入前に必ずチェックすべきポイント
最後に、RPA導入を検討する際のチェックリストを整理しておきます。
RPA向きの業務チェックリスト:
- 繰り返し発生する定型作業か?
- 複数のアプリケーションを跨いでいるか?
- 1日2時間以上の作業ボリュームがあるか?
- 明確なルールで処理手順を定義できるか?
RPA化を見送るべきサイン:
- 例外パターンが多く、すべてをルール化できない
- 途中で人間の判断や承認が必要
- 操作するWebサイトやシステムの変更頻度が高い
これらを事前に見極めることで、RPA導入の失敗リスクを大幅に減らすことができます。
次回は、実際にRPA開発プロジェクトを進める際の具体的なステップについて解説します。
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