運送・物流の安全管理

点呼DXとは?遠隔点呼・自動点呼の種類・要件・始め方を解説

点呼は、運送事業の安全を支える基本的な業務です。しかし、早朝・深夜の運行、複数の営業所、慢性的な人手不足のなかで、「運行管理者が点呼のために張り付き続ける」体制は、多くの事業者にとって大きな負担になっています。実際、監査で最も多く指摘される違反項目のひとつが点呼だとも言われ、負担の重さと確実な実施の両立が課題になっています。

この課題を解決する手段として近年整備が進んでいるのが、ICTを活用した点呼、いわゆる「点呼DX」です。対面点呼が原則であることは変わりませんが、その代替手段として遠隔点呼や自動点呼といった選択肢が広がってきました。本記事では、点呼の種類を整理したうえで、遠隔点呼・自動点呼の中身、2025年の制度拡大、導入のメリットと手続きまでを解説します。

この記事でわかること

  • 対面点呼から遠隔点呼・自動点呼までの種類と違い
  • 遠隔点呼・自動点呼それぞれの中身と主な要件
  • 2025年に拡大した制度(業務前自動点呼・事業者間遠隔点呼)
  • 導入のメリットと、始めるための手続き・注意点

点呼はなぜ「DX」が必要なのか

点呼は、貨物自動車運送事業輸送安全規則の第7条で、乗務前・乗務後の実施が義務づけられています。ドライバーの健康状態・酒気帯びの有無・車両の状態などを確認する、安全運行の要です。一方で、次のような事情が、点呼業務を圧迫しています。

  • 早朝・深夜の出庫・帰庫にあわせて、運行管理者が常時対応しなければならない
  • 営業所が複数あると、それぞれに点呼体制が必要になる
  • 運行管理者・補助者の人手が慢性的に不足している

負担が重くなるほど、点呼の形骸化や記録漏れのリスクも高まります。「確実に実施しながら、負担を減らす」——この両立のために、ICTを活用した点呼の整備が進められてきました。

点呼の種類 ― 対面からデジタル点呼まで

点呼にはいくつかの方法があり、それぞれ実施できる条件が異なります。まず全体像を整理しましょう。

種類概要ポイント
対面点呼運行管理者等が対面で実施原則。基本となる方法。
電話点呼遠隔地など、対面が困難な場合の補完的な方法実施できる場面が限られる。
IT点呼ICT機器を用いた点呼安全性優良事業所(Gマーク)などの要件がある。
遠隔点呼生体認証と高度な機器で2地点間を結んで実施Gマークや業種を問わず、機器・環境要件を満たせば可能。届出制。
自動点呼認定機器を使い、管理者の立ち会いなしに実施業務後に加え、2025年から業務前も可能に。届出制。

このうち「点呼DX」の中心になるのが、遠隔点呼自動点呼です。それぞれ詳しく見ていきます。

「遠隔点呼」とは ― 離れた場所を結ぶ点呼

遠隔点呼は、カメラ・モニターなどの映像・音声機器と、顔認証・静脈認証・虹彩認証などの生体認証による本人確認を用いて、離れた2地点間で行う点呼です。運行管理者等による対面点呼と同等の扱いになります。2022年4月から申請が始まり、先に解禁されていたIT点呼と違ってGマークや業種を問わず、機器・システムの要件を満たせば実施できるのが特徴です。

離れた場所で行う分、対面と同等の確実性を担保するための要件が定められています。主なものは次のとおりです。

  • 運転者の顔の表情・全身、酒気帯び・疾病・疲労・睡眠不足などの状況を、映像で明瞭に確認できること
  • 点呼場所の明るさ(照度)を確保し、なりすましや不正を防止できること
  • アルコール検知結果を自動で記録・保存できること
  • 点呼記録を電磁的に1年間保存し、改ざんを防止できること(修正すると修正前の記録が残る等)
機器・環境の目安:運行管理者側のモニターは16インチ以上・解像度1920×1080以上、運転者を映すカメラは200万画素以上・30fps以上が望ましいとされています。導入前に、使用する機器・システムが要件を満たすかを確認しましょう。

「自動点呼」とは ― 管理者の立ち会いなしで行う点呼

自動点呼は、運行管理者等の代わりに、国土交通省が認定したロボットやICT機器を用いて実施する点呼です。あらかじめ作成した点呼予定に基づき、管理者の立ち会いなしに点呼を行います。なりすまし防止のための本人確認、アルコール検知結果の自動記録、記録の電磁的保存・改ざん防止などが要件になります。

  • 業務後自動点呼:2023年から実施可能。乗務後の点呼を自動化できる。
  • 業務前自動点呼:2025年から実施可能になった、新しい枠組み。

これにより、乗務の前後どちらの点呼も、条件を満たせば自動化できるようになりました。

2025年の制度拡大 ― 事業者間遠隔点呼・業務前自動点呼

点呼DXは、2025年に大きく前進しました。国土交通省は、対面点呼と同等の効果を認める告示を令和7年(2025年)4月30日付けで改正し、これまで認められていた遠隔点呼・業務後自動点呼に加えて、事業者間の遠隔点呼業務前自動点呼も実施できるようにしました。

「事業者間遠隔点呼」は、資本関係のない事業者どうしでも、管理の受委託の許可など必要な手続きを行えば、遠隔点呼を実施できる仕組みです。深夜・早朝に自社で点呼要員を確保しづらい場合などに、他事業者と連携して点呼を回せる可能性が広がります。

国土交通省は、これらの制度を運行管理者の負担軽減や人手不足への対応に役立ててもらうため、2025年末に「遠隔点呼・自動点呼の制度内容・要件・運用・申請方法等に関する解説パンフレット」を公表するなど、普及を後押ししています。

導入のメリットと、始めるための手続き

主なメリット

  • 運行管理者の点呼業務の負担を軽減できる
  • 早朝・深夜や多拠点でも、点呼体制を柔軟に組める
  • 点呼記録が電子化され、改ざん防止・保存・共有がしやすくなる
  • 健康状態・アルコール・車両状態などの確認結果を、まとめて管理できる

手続きの流れ

遠隔点呼・自動点呼を実施するには、要件を満たしたうえで、営業所を管轄する運輸支局等へ届出(申請)を行う必要があります。事業者間遠隔点呼を行う場合は、これに加えて管理の受委託の許可などの手続きが必要です。

補助金・助成の活用:国土交通省は近年、遠隔点呼・自動点呼の導入支援を行っており、全日本トラック協会や各都道府県のトラック協会でも、点呼機器の導入に対する助成が実施される場合があります。導入を検討する際は、活用できる制度がないか、所属するトラック協会などに確認するとよいでしょう。

導入前に押さえておきたい注意点

点呼DXは負担軽減に有効ですが、「形だけ導入する」ことが目的ではありません。次の点に注意しましょう。

  • 対面点呼と同等の確実性が保てる機器・環境を選ぶ
  • なりすましやアルコール検知器の不正使用を防ぐ仕組みがある
  • 機器が故障・停止したときに、対面点呼へ切り替えられる体制を用意しておく
  • 点呼で異常があった場合に、対面やビデオ通話で確認できるようにしておく
  • 導入後も、記録が確実に残り、いつでも取り出せる状態を保つ

まとめ ― まず何から始めるか

点呼DXは、人手不足のなかで「安全」と「効率」を両立させるための、現実的な選択肢になりつつあります。いきなり全営業所で導入する必要はありません。次の順で検討を進めるとよいでしょう。

  1. 自社の点呼業務の負担(時間帯・拠点・担当者)を洗い出す
  2. 遠隔点呼・自動点呼のどれが自社に合うかを見極める
  3. 要件を満たす機器・システムと、活用できる補助金・助成を確認する
  4. 管轄の運輸支局等へ届出などの手続きを行う
  5. 点呼記録を、労働時間などの記録とあわせて一元管理できる形にする

点呼で確認する健康状態やアルコール、そして労働時間の記録がバラバラだと、せっかくのデジタル化も効果が半減します。点呼記録と勤怠・労働時間をつなげて管理することで、負担軽減と安全管理の両方を前に進められます。

点呼のデジタル化と勤怠管理を、ひとつに。

株式会社エバーグリーンは、運送・物流事業者向けに勤怠管理システムと安全管理コンサルティングを提供しています。点呼で確認した健康状態・アルコール・労働時間の記録をつなげて管理し、負担を減らしながら安全管理を強化する体制づくりをご支援します。

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