2025年、国内大手の運送事業者が、乗務前の点呼でのアルコールチェックを一部実施していなかったとして、事業許可の取消し方針を通知されました。この事案は業界に大きな衝撃を与え、「うっかりの記録漏れでも、事業の存続に関わるのではないか」という不安を広げています。
アルコールチェックは、多くの事業者ですでに導入済みの取り組みです。しかし問われているのは「導入したかどうか」ではなく、毎回・確実に実施し、記録として残せているかという運用の徹底です。本記事では、アルコールチェックの義務の中身をナンバー別に整理したうえで、運用でつまずきやすいポイントと、確実に回すためのチェックリストを解説します。
この記事でわかること
- アルコールチェック義務のナンバー別(緑・白・黒)の違い
- 記録として残すべき項目と保存期間
- 運用でつまずきやすい「抜け漏れ」パターンと対策
- 確実な運用のためのチェックリスト
アルコールチェックの義務とは ― ナンバー別の違い
アルコールチェックの義務は、車のナンバー(事業の種類)によって、根拠となる法令も義務化の時期も異なります。まず全体像を整理しましょう。
| 区分 | 主な対象 | 検知器の使用義務 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 緑ナンバー | 一般貨物自動車運送事業者(トラック運送など) | 2011年5月〜 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則 |
| 白ナンバー | 自動車5台以上、または定員11人以上の車1台以上を使う事業所 | 2023年12月〜(2022年4月から目視確認) | 道路交通法施行規則 |
| 黒ナンバー | 貨物軽自動車運送事業者 | 対象(2025年4月に安全対策を強化) | 貨物自動車運送事業輸送安全規則等 |
運送事業の中心となる緑ナンバー(一般貨物)では、輸送安全規則第7条により、乗務前・乗務後の点呼を原則対面で行い、その中で運転者の酒気帯びの有無を確認します。確認は、顔色・呼気の臭い・応答の声の調子などを目視等で確かめたうえで、営業所ごとに備えたアルコール検知器を使って行い、記録を1年間保存します。遠隔地で乗務を開始・終了する場合は、運転者に携帯型の検知器を携行させます。
「実施」だけでは不十分 ― 記録で問われる項目
アルコールチェックは、実施しただけでは足りません。記録に残し、保存していることまでがセットの義務です。監査では、この記録がまず確認されます。白ナンバーの場合、記録すべき項目は次のとおりです(緑ナンバーの点呼記録も、これに準じた内容が求められます)。
- 確認者名
- 運転者名
- 運転者の業務に係る自動車の登録番号または識別できる記号・番号
- 確認の日時
- 確認の方法(検知器の使用の有無、対面でない場合はその具体的な方法)
- 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
これらを1年間保存します。紙やExcelでの記録も認められていますが、記入漏れ・紛失・後追いの記入といったリスクがつきまといます。「実施はしているのに記録が不十分」という状態こそ、監査で最も指摘されやすいポイントです。
運用でつまずきやすいポイント
義務の内容そのものより、日々の運用でこぼれ落ちる部分に注意が必要です。よくあるつまずきと対策を整理します。
| つまずきやすいポイント | 対策の方向性 |
|---|---|
| 直行直帰・出張 | 携帯型検知器を携行させ、電話やカメラを使って確認。対面でない場合の方法を必ず記録に残す。 |
| 早朝・深夜・多拠点 | 確認者が対応しきれる体制か見直す。IT点呼・遠隔点呼の活用も検討する。 |
| 検知器の管理 | 点検・校正・電池切れ対策をルール化し、予備機を用意する。 |
| 記録の形骸化 | 「あとでまとめて記入」をなくす。実施と同時に記録が残る仕組みにする。 |
未実施・記録不備が招くもの ― 行政処分のリスク
アルコールチェックそのものに直接の罰則規定はありませんが、運送事業者にとっては、点呼やアルコールチェックの未実施・記録不備が重い行政処分につながります。処分は違反の内容・程度に応じて段階的に重くなります。
- 車両の使用停止(〇日車)
- 事業の停止
- 事業許可の取消し
冒頭で触れたように、大手事業者であっても点呼・アルコールチェックの未実施を理由に許可取消しの方針が示される時代です。記録の未作成や虚偽記載は処分を重くする要因であり、企業の信用にも直結します。今後、監査の目はいっそう厳しくなると見ておくべきでしょう。
確実な運用のためのチェックリスト
「やっているつもり」を「確実にやれている」に変えるために、次の点を自社の運用に照らして確認してみてください。
- 乗務前・乗務後の2回、検知器を使って確認しているか
- アルコールチェックをしないと運行できない仕組みになっているか
- 記録8項目に漏れがなく、実施と同時に記録が残っているか
- 直行直帰・遠隔地の確認方法が決まっていて、記録にも残しているか
- 検知器の点検・校正・予備機のルールがあるか
- 記録を1年間、いつでも取り出せる形で保存しているか
- 実施状況を管理者が定期的に点検しているか
特に効果が大きいのは、「実施と同時に記録が残る」仕組みにすることです。記録を後追いや手作業に頼るほど、抜け漏れやミスは起こりやすくなります。点呼・アルコールチェックの記録をデジタルで管理すれば、負担を増やさずに、監査にも自信を持って対応できる体制に近づきます。
アルコールチェックの記録、「確実に残る」仕組みに。
株式会社エバーグリーンは、運送・物流事業者向けに勤怠管理システムと安全管理コンサルティングを提供しています。点呼・アルコールチェックの記録と労働時間をまとめて管理し、抜け漏れのない運用と、監査に強い体制づくりをご支援します。