勤怠・労務管理

手書き・Excel勤怠の限界

多くの中小企業では、いまも出勤簿への手書きや、Excelに入力した出退勤時間で勤怠を管理しています。長く使い慣れていて、追加コストもかからない——「とりあえず回っている」ので、わざわざ見直すきっかけがない、というのが実情ではないでしょうか。

ですが、その「なんとか回っている」状態こそが、残業代の計算ミスや改ざんリスク、月末の集計負担といった問題を静かに抱え込んでいることが少なくありません。とくに従業員が増えてきたり、働き方が多様になってきた会社ほど、手集計の限界はじわじわと表面化します。

この記事では、手書き・Excelによる勤怠管理がどこで限界を迎えるのかを整理したうえで、システム化することで何が変わるのかを見ていきます。

「なんとか回っている」手集計が抱える3つの限界

手作業の勤怠管理には、大きく分けて「ミスが起きやすい」「改ざんの余地が残る」「月末に負担が集中する」という3つの弱点があります。順番に見ていきましょう。

① 残業計算のミスが起きやすい

勤怠集計でいちばんミスが出やすいのが、残業時間の計算です。所定労働時間を超えた分の集計に加え、深夜(22時以降)の割増、休日労働の割増、端数の処理など、ルールが重なると手計算では一気にややこしくなります。

Excelで管理している場合も安心はできません。関数やセルの参照がいつのまにかずれていた、コピー&ペーストで数式が壊れていた、というのはよくある話です。しかも、間違ったまま気づかずに給与へ反映されてしまうと、未払い残業のトラブルにつながりかねません。

② 改ざん・あとから修正できてしまうリスク

手書きの出勤簿やExcelの自己申告は、本人や管理者があとから自由に書き換えられてしまいます。悪意がなくても「思い出しながら記入した」「キリのいい時間に丸めた」といった曖昧さが入りやすく、実態とのズレが生まれます。

これは単なる正確性の問題にとどまりません。後述するとおり、手書き出勤簿やExcelの自己申告は、客観的な労働時間の記録としては弱い扱いになります。労使間でトラブルになったとき、「会社として正しく時間を把握していた」と示しにくいのです。

③ 月末にしわ寄せが集中する

締め日になると、各人の出勤簿やExcelを集めて、転記して、合計して、給与計算ソフトに入力して……という作業が一気に発生します。担当者は数日がかりで残業しながら集計し、修正が入ればやり直し——というのは多くの会社で見られる光景です。

さらにこの作業はベテラン担当者の経験に頼りがちで、属人化しやすいのも問題です。担当者が休んだり退職したりすると、とたんに回らなくなるリスクを抱えています。

法律から見ても、手集計は分が悪い

勤怠管理は会社の好みの問題ではなく、法律で求められている業務でもあります。2019年4月に施行された改正労働安全衛生法により、企業には従業員の労働時間を「客観的な方法」で把握することが義務づけられました。対象は一般の社員だけでなく、管理監督者や裁量労働制の従業員まで広がっています。

厚生労働省のガイドラインでは、客観的な記録の例としてタイムカード・ICカード・PCの使用時間の記録などが挙げられています。一方で、手書きの出勤簿やExcelの自己申告は、あとから修正・改ざんができてしまうため、客観的な記録としては認められにくいとされています。

客観的把握の義務そのものに直接の罰則はありません。しかし労働時間を正確につかめていないと、時間外労働の上限(原則 月45時間・年360時間。トラックドライバーは年960時間)を知らないうちに超えてしまうリスクが高まります。上限規制への違反は罰則の対象になり得ます。あわせて、賃金台帳や出勤簿などの記録は、原則5年間(当分の間は3年間)保存する義務がある点も押さえておきたいところです。

システム化で何が変わるか

勤怠システムを導入すると、これまで手作業で抱えていた問題の多くが仕組みで解消されます。手集計とシステム化の違いを整理すると、次のようになります。

観点手書き・Excel勤怠システム
残業集計手作業で転記・計算し、ミスが起きやすい残業・深夜・休日を自動で集計
記録の客観性自己申告ベースで改ざんの余地が残る打刻データが客観的な記録として残る
月末の負担集計担当に作業が集中する締め作業を大幅に短縮できる
法対応上限・改善基準告示の管理が手間上限に近づくとアラートで予防
属人化特定の担当者に依存しがち仕組みとして標準化できる

ポイントは、システム化が「楽になる」だけでなく、「ミスを減らし、記録を残し、法令対応の土台をつくる」ことにつながる点です。残業代の計算根拠が客観的なデータとして残るため、労使トラブルの予防にもなります。

運送・物流業ではとくに効果が大きい

手集計の限界は、運送・物流業ではさらに顕著になります。ドライバーが事務所に出社しない直行直帰の働き方では、そもそも出勤簿を押す前提が成り立ちません。手書きや電話・口頭の申告に頼ると、正確な労働時間の把握はますます難しくなります。

加えて、改善基準告示で定められた拘束時間や休息期間の管理は、手集計ではほぼ限界です。スマホのGPS打刻など「事務所にいなくても客観的に打刻できる」仕組みと、拘束時間まで見える化できるシステムがあって初めて、現場の実態に合った管理が可能になります。

スモールスタートでいい

「システム化」と聞くと、大がかりで費用もかかる、と身構えてしまうかもしれません。ですが、いきなり全部を変える必要はありません。次のような小さな一歩から始めるのが現実的です。

  1. いまの手集計でいちばん困っていること(残業計算・締め作業・改ざん不安など)を書き出す
  2. 「これだけは解決したい」という優先課題を1〜2つに絞る
  3. 無料トライアルで、まず一部の拠点・一部の従業員から試してみる
  4. 現場で問題なく使えそうか確認してから、全社へ広げる

大事なのは「いきなり完璧を目指す」ことではなく、「いちばん痛いところから手をつける」ことです。

まとめ

手書き・Excelによる勤怠管理は、慣れていて手軽な反面、残業計算のミス・改ざんリスク・月末の集計負担という限界を抱えています。法令面でも、手集計は客観的な記録として弱く、上限規制や記録保存の観点から見直しが求められる場面が増えています。

まずは「いまの手集計で何にいちばん困っているか」を書き出すところから始めてみてください。そこが、自社にとってのシステム化の出発点になります。

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